column



いのしし考

 取材中に出会った人々や事柄、疑問に思ったこと。そして食べ物。興味本位に綴
ろうとスタートしたページです。                      
今回は、神戸市条例で『餌を与えてはダメ!!!』な猪のお話しをします。     

 例年になく早い桜の開花…と言うよりも異常な暖かさが続いた2002年の春。  
暖かいってことは虫たちが地上に出てくるのも早いだろうし、冬眠する動物だって
目覚めが早いだろうし花見に出掛ける浮かれ人の出足も早い。そしていつも通り東
東灘区の天井川には、すっかりお馴染みのイノシシ一家がお出ましとなった。  
 4頭は天井川の川上から川下までをテリトリーとしていて、住民の弁を借りれば
「ここに住ンどんねん」だそうだ。人が集まり、川を覗き込むと河原で親イノシシ
が片足を護岸帯に掛け鼻先を向けてくる。そして何かを催促するように上に向かっ
て2・3度、クンクンッと動かしてみる。これは想像する通りの『おねだり』ポーズ。
犬でも猫でもイノシシでも、自分に媚びてくれるのは嬉しいもので、たとえそれが
刷込やパブロフの犬のような繰り返しによる学習で習得したものであっても、その
サインを受け取る側としては手放しで嬉しい。                

  思わず手にし袋から"ベンベン"  
  虫養いのチップスを"ベンベン"  
馬手でグワシッとつかみ上げ"ベンベン"
天空高く〜ぅ撒き散らぁすぅ"チャカチャンリンデンデン !

となってしまう。                             
この現象も、端から見てればほのぼのとした春の歳時記的出来事だけど、このイノ
ちゃん達とテリトリーが重なる周辺の住民にしたら、無責任な事をされては困るっ
てことになる。野良犬や野良猫でも迷惑を掛けられていると自覚する人にとってお
おごとなのに、野生のイノシシとなると、大変に残念だけど、命に関わる計り知れ
ない危険が伴う。だから軽口を叩くのは控えておくけど、一言だけグチりたい。 
人間は周りの自然などほとんど無視して開発を続けてきた。山をくずし、海を埋め
人間が快適に居住するためにやりたい事をやってきた。人間達の間でルールを作っ
て相互にルールを守る事で快適さを保っているけど、共存する全ての命あるものに
気を配っている訳ではない。水が汚れている。大気が汚れている。緑が失われてい
ると嘆き、自然を大切にしようとルールを作り出したが、その結果を生んだのは犬
猫のせいではない。ましてイノシシのせいでは決してない。でも、イノシシに畑を
荒らされたり、かまれたり、ヘッドバットをかまされた人達にしたら、イノシシは
やっかいなヤツだと思う。                         
イノシシにしたら何百年も前から六甲山系に住んでいた。その頃は山麓に人家はほ
とんどなかった(多分)。 餌は豊富だったし山中を動き回っても人間に出逢うことな
どはなかった。もし、出逢ったなら命に関わる事だから、つま先立ちでコソコソッ
と逃げろと先達から擦り込まれていた。ところが人間がイノシシのテリトリーにズ
カズカと入り込んできて、山はだんだん狭くなり、餌はドンドンなくなって、仕方
なく山から下りてくると人間が勝手に線引きした街があって、イノシシはここから
入るなとはいわないけれど、入れば有無を言わず虐待された。         
人間の考える自然は人間に都合のいい自然で、イノシシにすれば生きる為の掛け替
えのない環境。共存出来る可能性はあるだろうが人間本意で考えると結論は前出の
市条例になるのだろう。共存のためには仕方がないのなら、イノシシが生きていけ
る環境を確保してやることが先ではないだろうかと強く思うのは私だけではないだ
ろう。パンダなる熊に何億円も掛けて、血道をあげて躍起になる前にもつと冷静に
なろうよ。パンダをどんなに大事にしても、ある日パンダ舎の池から女神が現れて
「お前の失った自然は平凡な自然だが、珍獣パンダを大切にしたご褒美にレアメタ
ル含んだ最上級の自然を授けよう」なんてことはないんだから。そんな話があった
としても、取り返せない自然とレアメタルの含有量は比べられないものだと思う。
 ボタン鍋で喰っちゃう事もあるが、地味だが共存している地のイノシシの事を考
えてやったほうが神戸のためになるんじゃないだろうか。ねぇ、新しい市長さん。
 

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