column

EURO考

 取材中に出会った人々や事柄、疑問に思ったこと。そして食べ物。興味本位に綴
ろうとスタートしたページです。                      
今回は、なくなってしまったヨーロッパ諸国のお金の話。           
 
EUのお金がEUROに統合された。私が若い頃に一喜一憂した、馴染みのお金がな
くなってしまったんだなぁと考えるとちょっと寂しい気がする。        
自分が生きてきた時代に自分の周りにあった物は、その時代の象徴として記憶に深
く刻まれていて、例えばそれが流行歌だったり、物質だったり、また言葉だったり
と違いはあるとして、私の20代の象徴はこの外貨だと言える。         
 10代後半から家業の時計屋を手伝いはじめ、アメリ船舶相手に時計の修理と販売
がメインだった家業は米ドルのやり取りが日常だった。固定為替相場($1=¥360)
の時代で、換算もそんなに面倒ではなかったけど、変動相場に変わってからは、得
することはなくても損することは多くて、いつかドルは高くなる!!と信じて360円
時代の1万ドルを抱いていた親父は結局1ドル260円のドツボにはまってしまった。
 家業を離れて後、私が外国紙幣を手にしたのはフランス・フランが初めてだった。
76年当時で60円程。日本にずっと住んでいるのなら為替が動いても途端に生活に
影響が出る事もなく、気にもならないのだが、外地で円を現地貨に換えて生活して
いるとドキドキの連続で、銀行レートが60円だったから「明日でいいか…」なんて
考え、翌日出掛けて行くと62円になっていて、一泊30フランの安ホテルに泊まっ
ている身としては一泊31フランに値上げされたようなもので、限られた経済はドン
ドン悪くなるしかなかった。80年年末日本に帰国するまでのフランの底値は46円
だった。ま、どちらにしても、そんな泣き入れてないでとっとと日本に帰ればいい
ことだけど、なまじっかその国の居心地を知ってしまったものだから、旅行者は、
かなりしんどい目をしながらも「ここに居たい!!!」と身勝手に思う。      
 そんな思いが詰まったヨーロッパの貨幣が統一された。           
それがまず信じられないけど、個人主義が服着て歩いているような欧州各国の人達
が決断したんだから、余程欧州の経済も悪いのかも。もう持ってても紙切れ同然の
フランスやイギリスのお金だけど、久しぶりに机に広げて眺めてみると、お金に纏
わるエピソードが次々と思い出される。細かい事はまた書くとして、日本のような
島国では決して体験できないことが世界中で起きていて、数時間で世界中の周知の
事実となるけれどその断片のほんの一部に関わりを持った事があると「換わるね」
「そうだね」…「換わったよ」「ほんとだね」では済まない、なんか哀しいものが
あったりする。アイルランド経済省の役人が「アイルランドとしての国の歴史が若
いのでこんな模様になった」と英国との確執を飲み込みつつ見せる貨幣には、イル
カやハープの模様が刻まれ「誰もアイリッシュ・プントとは呼んでくれません」と
1対1の等価のはずがポンドはヨーロッパ中で使える(換金)のに、プントは英国内
でさえ使用出来ない辛い現実を言葉を選びつつ教えてくれた。その紙幣をパリ銀行
に換金しに出掛けたら「何処の国の紙幣ですか? 見た事がない」と言われてショッ
クだった。そんなこんなの話は山ほどある。またの機会にお話しをプールしておこ
うと思う。                                

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